東京のカタスミで、

山城ショウゴ

遠足で、おかっぱヘアー

僕は一時期、おかっぱヘアーだった。

 

別にこれといって理由はなく、なんとなくおかっぱ(流行りで言う所のマッシュ)にしたくなって、半年ぐらいそうしていた。

バイト先では先輩に「亀頭」というあだ名をつけられたり、「ちょっと笑えない」など否定的意見の数々。でも、そんな中でも「お洒落だねー」と言ってくれる友達もいたり、何より自分自身は、周りの意見に左右される事なく、結構おかっぱを気に入っていた。

 

 

 

その日、僕はいつも通り、のびすぎたおかっぱヘアーをワサワサさせながら、実家の近所である大阪城を散歩していた。

 

しばらく歩いていると、前から、小学生の集団が歩いてきた。

 

どうやら遠足かなにかのようで、先頭には先生らしき人が歩いていた。

みんな楽しそうに、手をつないだりしながら遠足を楽しんでいるように見えた。

 

 

まだ午前中だった。

みんなお昼のお弁当と、300円までのお菓子が待ち遠しくてたまらないのだろうな、などと昔の事を思い出したり、彼らの事が少し羨ましくなったりしながら、僕は小学生にこっそり小さく手を振っていた。

 

 

すると、一人のやんちゃそうな生徒が、僕の事を指差しながら「鈴木だ、鈴木だー!」と笑いながらはしゃぎだした。

 

 

 

 

僕は、すぐに分かった。

 

この列の中に、同じ様なおかっぱ頭をした「鈴木君」がいるのだという事を。

 

 

僕はなんだか、鈴木君に申し訳なくなった。僕のせいでもし、鈴木君がいじめられるような事態に陥ってしまったら。

お昼ご飯のおかず「唐揚げ」を、あのやんちゃそうな生徒に奪われてしまうような事件がおきてしまったら・・。

 

 

 

僕は早足で、目をそらしながら、この遠足の列との時間をやり過ごす事にした。

 

 

 

 

 

 

最後尾がみえてきた。

 

 

最後尾では、おかっぱ頭で薄毛をなびかせながら、生徒達を誘導する「鈴木先生」が僕に優しく微笑みかけていた。

 

 

 

僕はその早足のまま、美容室に向かった。