早朝のコンビニに、変な男
早朝のコンビニにやってきた。
変な男がいる。
昨日は、いつも通り特に予定もなく、昼過ぎまで平気で寝ていた僕は、夜眠りにつく事が出来なかったので、0時頃からひたすらに本を読んでいた。
読んでいればそのうちに眠たくなるだろうと思い読み始めたのだけれども、一冊読み終え、そして二冊読み終え、
昨日買った雑誌「SWITCH」の特集、樹木希林といっしょ。
も読み終えてしまって、気がついたら朝になっていた。
窓を開けると、鳥の鳴き声と清々しい朝の匂いがする。
とりあえずまだ眠くなかったので、散歩に出かけることにした僕は、帰り道、近所のコンビニに寄った。
そしてその、早朝のコンビニに、変な男がいる。
年齢はおそらく自分と同じくらいで、男だ。
買い物かごを持っている。
カゴの中には、コンビニ弁当と、牛乳が入っている。
朝ごはんだろうか。しかし、その弁当と牛乳はどう考えても相性が悪い。
朝、牛乳を飲みたくなる気持ちはよく分かる。
だからといってその、「唐揚げ弁当と牛乳」では相性が悪すぎる。
唐揚げ弁当が必要なぐらいの空腹であるならば、牛乳を諦めて、飲み物は水かお茶にするべきだ。
どうしても牛乳が飲みたいのであれば、その突き当たりを左に曲がったところにある
パンコーナー
で、パンを買うべきだ。
「そこを左に曲がったところにパンコーナーがありますよ。」
と、言ってしまいたい気持ちを紛らわすために、とりあえず目の前にある野菜コーナーから大好きなトマトを手に取った。
その男は牛乳と弁当を入れたカゴを手にしたまま、右に曲がり、雑誌コーナーに向かった。
そして雑誌コーナーで、立ち読みを始めた。
手にしたのは、
雑誌「SWITCH」の特集、樹木希林といっしょ。だった。
僕がさっき読んでいたやつだ。映画が好きなのだろうか。
パラパラとページをめくっている。
横目に、樹木希林の切なげな表情(写真)が一瞬見えた。
そのページをその男は、ほんの2秒程度で、次のページにめくる。
いやちょっと待ってくれ、そのページはそんなほんの数秒でめくって良いようなページではない。ちゃんと読んでほしいページだ。
咳払いで威圧をかけた。
しかし、その変な男は構わず、未だにパラパラとページをめくり、雑誌は終盤に差し掛かっている。
そしてそのまま、僕の願いは届かず、
雑誌「SWITCH」の特集、樹木希林といっしょ。
は雑誌コーナに戻された。
僕はこのやりきれない気持ちを紛らわすために、手に持っていた雑誌「プレジデント」を雑誌コーナに戻し、横にあったドリンクコーナーからブラックコーヒーを手に取った。
早朝のコンビニで、最悪の組み合わせ、「唐揚げ弁当と牛乳」を買い物カゴに入れ、
「SWITCH」の特集、樹木希林といっしょ。
を適当にあしらったその男は、そのまま会計を済ませて、コンビニから出て行った。
全く変な男だった。
ふと店内の時計を見ると、コンビニに入ってから20分が経とうとしている。
眠気も、やってくる。
このまま真っ直ぐ家に帰って、燃えるゴミを出した後、布団に入れば、きっと安らかに眠りにつくことができるだろう。
そのまま僕はレジに向かう。
そして、レジに並べられた
「トマトとブラックコーヒー」の、その相性の悪さに僕は言葉を失った。
早朝のコンビニには、変な男しかいない。