東京のカタスミで、

山城ショウゴ

夏が終わる。

夏が終わる。

 

今年も僕は、夏らしい事なんて全然できなかった。

祭りにも行けなかったし、川でBBQもしていない。

一度だけ、海には行った。

ちょっとだけ日焼けしたりもして、夏っぽかった。

 

しかしもっとこう、流しそうめんだったり、虫取りだったり、花火大会でドキドキしたりだとかもっとこう・・あー夏だなーみたいなこうもっと・・あ、

 

山下君が家に泊まりに来た。

 

山下君は時々、僕の家に泊まりに来る。

「一緒に雑誌読まない?」

みたいな感じで、マガジンとトマトを持って僕の家に泊まりに来る。

「今、歯磨き粉きらしててさー。かしてくんない?」

と、訳のわからない理由で泊まりに来る。

「ゴキブリが風呂場にでちゃってさー、風呂かしてくんない?」

女々しい理由でも泊まりに来る。

 

「明日の数学のテストでどうしても分からないところがあるんだけどさ・・、教えてくんない?」

社会人の山下君は、この日も、一段と訳のわからない理由で泊まりに来た。

 

泊まりに来るといっても、いつも何もしない。

本当になにもしない。

退屈だったので、しりとりをしてみないかと提案してみた。

「いいねー」

山下君がのってきた。

 

僕   「じゃあー・・、しりとり」

 

山下君 「リヒテンシュタイン

 

 

散歩に行かないかと提案してみた。

「お、いいねー」

山下君がのってきた。

 

家を出てすぐ、山下君の提案でとりあえずコンビニに寄ることになった。

缶コーヒーでも買うのかと思ったら、雑誌コーナーに直行。

山下君   「あ、この雑誌(マガジン)、一緒に読まない?」

 

 

部屋に戻って、また一人一人、それぞれの時間が流れる。

パソコンでの一仕事を終えたので、山下君にまた声をかけてみる。

 

僕  「面白そうな映画レンタルしてるからさー、一緒に見る?」

 

山下君「あ、ごめん今雑誌(マガジン)読んでるー。」

 

 

夏が終わる。